ABOUT

こんにちは。サトーカンナの本を売っています。
匿名配送でポストにお届けします。

✴︎ ✴︎ ✴︎ ✴︎ ✴︎ ✴︎

ひそかな宇宙について

 部屋の外に出て真上を向いた先に、宇宙があることを知っている。でも、ほとんどの人は宇宙のすがたをその目で見たことがない。星星がぼんやりと浮いているだけ。

 宇宙ではすべてが起こり、終わっていく。私の知らないところで、あらゆるものごとがわきでるように無限に生まれ、そのうち死んで星くずとなり、いつか消滅する。瞬くようで、永続的にも見えるきらめき。

 一度も見たことがないけれど、私はとても確からしく、そう思っている。

 部屋の外に出て真横を向いた先に、知らない誰かの生活があることも知っている。しかしその生活をじっさいに見ることはできない。想像がぼんやりと浮いているだけ。

 生活ではすべてが起こり、終わっていく。赤ん坊がわめき、電子レンジが鳴り、洗濯機が呼ぶ。テレビが笑って、本が散らばり、花は枯れる。まめな男は火曜日の朝7時50分に燃えるごみを出してでかけ、指先の乾燥した女が袋をうまく一枚だけ取り出す裏ワザを試す。恋人たちがけんかしたあと気まずく沈黙する隣の部屋では老人がひざの上に猫を抱え、その階下でさびしい人が薬を飲み夜をごまかしている。

 当然に、すべてのシーンを目撃することができない。

 他人の生活はいつも隠されている。みんな自分だけのスペースのなか、すべてが猛スピードで起こり、無限にひろがってくり返すようにつづき、しかしいつか終わるのだ。どうでもよいものごとを含むすべて。それをほうっておくのが、なんだか惜しいと思う。

 だからせめて自分の生活を観測して記録する。そして同じように記録された誰かのレポートを読んで何かを思う。ほんのすこし見えないものが見えた気がすると、新しい星を発見したように興奮する。瞬くようで、永続的にも見えるきらめき。生活は、ひそかな宇宙である。